大学生の歓楽街デビュー イン福岡

僕はそのとき童貞だった。

大学一年の冬はてっきり自分が思い描いていたような未来が実現しているはずだと思っていた。

しかし、そんなことは何ひとつ叶わなかった。

周りが次々と恋人をつくっているのに僕のもとには誰もいない。

行動してないわけじゃない。

どうしてこうなるんだ…。

福岡には学生専用の福岡デートクラブがあるらしい、そうラジオで聞いたことがある。バイト終わりの寒い路地裏を歩いていると、ふとそんなことを思い出した。

クリスマスには予定がなかった。

バイトも入る予定はなく(恋人ができると期待していたのだ)慰めあう友達も集まらず、途方に暮れていた僕にとってそれほど都合の良い場所はない。

それで、いま福岡にいる。

ネットで調べた情報はどこか如何わしい感が拭えなかった。でもそれらしき交際クラブの存在はそこでしか見つけることができなかった。

はあ、僕はクリスマスに何をしているんだろう、ため息とともに駅のホームでうつむいた。

しかしもう来てしまったのだ。

淡い期待が頭の片隅でずっと揺れていた。しかもどんどん膨れ上がっていくのも自分でわかっていた。だから気づいたらもう福岡行きの新幹線に乗っていた。

怪しい。もう漫画の世界だよこれ。

サイトが表示した地図どうりに進み見つけた場所は僕の想像以上のものだった。「デートを習慣に」とどう理解したらいいのか戸惑うポスターがでかでかとガラス貼られている。

でも、もう行くしかない。

僕の中でどうにも消えない期待を、これ以上無視はできない。

カランカラン、ドアノブをゆっくりと押すと静かな店内に鈴の音が異様に鳴り響いた。